コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/9)
本日は、以下の4つの記事について取り上げます。
- <株主総会2020>役員報酬削減161社、リーマン超え
-
上場企業のROE、7年ぶり低水準 19年度6.7%
-
JDI、指名委等設置会社に 8月にも移行、不正会計で
-
総会日程 さらに窮屈 コロナで通常業務できず…今月下旬に8割集中
※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します
1.<株主総会2020>役員報酬削減161社、リーマン超え
【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスの感染拡大による急な業績悪化を受け、役員報酬を削減する企業が増えてきた。多くの企業の決算発表時期にあたる4~5月に役員報酬の見直しを公表した日本の上場企業は161社と、金融危機発生後の09年の同時期の107社を上回った。コロナ禍で店舗休業などを余儀なくされた外食や小売りなどの業種が目立つ。
【コメント】
欧米企業でもそうですが、日本企業でも役員報酬の減額(自主返上含む)を発表する企業数は、4月・5月に一気に増加しました。現時点では固定報酬部分の減額が主ですが、業績連動報酬自体の見直しや削減に取り組む企業が今後どの程度出るか、注目しています。
2.上場企業のROE、7年ぶり低水準 19年度6.7%
【注目ポイント(記事一部引用)】
日本企業の稼ぐ力が低下している。3月末時点で東証1部に上場する企業(金融・日本郵政除く)の2019年度決算を集計したところ、資本を効率よく使えているかを示す自己資本利益率(ROE)は6.7%と、12年度(5.3%)以来、7年ぶりの低水準となった。アベノミクスの企業統治改革で8%を目標の一つとし、17年度には10.4%まで高まったが、元の水準に逆戻りした。
【コメント】
伊藤レポートで提言されていたROE8%超というのは最低限の目標値であり、しかも一時的ではなく恒常的に達成することが、本来は求められます。もちろん、業種業態や企業のステージによって臨機応変に対応すれば良いのですが、7年ぶりの低水準というのは少し気になります。よく言われることですが、日本のコーポレートガバナンス改革は”攻めのガバナンス”と言われるように、稼ぐ力を高め企業が持続的な成長を実現することが求められています。社外取締役の増員や任意の委員会の活用など、外形的なガバナンス改革に留まらず、企業の競争力を高めていくことに繋がるガバナンス改革が今こそ必要だと思います。
3. JDI、指名委等設置会社に 8月にも移行、不正会計で
【注目ポイント(記事一部引用)】
液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)は8月にも社外取締役の権限が強い「指名委員会等設置会社」へ移行する方針を明らかにした。同社を巡っては昨年11月に不適切会計の疑いが浮上、第三者委員会が4月に不正会計と認定していた。ガバナンス(企業統治)体制の強化には統治形態の見直しが欠かせないと判断した。
【コメント】
企業不祥事の後、機関設計を指名委員会等設置会社に移行するケースが増えています。今回のJDIも機関設計の変更の理由はガバナンスの強化です。確かに社外取締役の権限が増すことで透明性は進むでしょうし、執行側への監督機能も強化される面はあります。しかし、その前提として、おさえておかなければならないことは以下のように様々です。・社外取締役が意思決定に必要な情報へアクセスが可能か、サポートする事務局機能は十分か
・取締役会が単に報告や確認の場ではなく、自由闊達に意見を戦わせられる会議体となっているか
・社外取締役が十分な時間と労力を掛ける高いコミットメントを持ってもらえているか
・(何よりも)現在のJDIの取締役会に必要となる要件を備えた人材を社外取締役として選べそうか突発的に機関設計の変更の議論が降ってわいたのではなく、これまでも時間を掛けて議論を行ってきたのかもしれませんが、一般的に上記のようなことを準備するのはそれ相応の時間が掛かります。また、必要な人材要件を備えた候補者に社外取締役を依頼して実際に就任してもらうのは容易ではなく、現在のように有力な候補者を各社で奪い合っているような状況では少なくとも1年以上は時間が必要です。今年の8月に機関設計を変える予定とのことですが、果たして準備が間に合うか、少々疑問ではあります。
4. 総会日程 さらに窮屈 コロナで通常業務できず…今月下旬に8割集中
【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスの影響を受けても、3月期決算企業の多くは6月の株主総会開催を動かさない。6月下旬のピーク週への集中率は前年の7割からさらに高まり、8割にのぼる。株価指数の主要銘柄でみても米欧の3~4倍。政府は開催の先送りなども容認する構えだったが、企業は年に1度の形式を重視する。
【コメント】
記事にもありますが、日本政府も今年のコロナウィルスの影響を踏まえて、株主総会の開催時期の見直しや配当金決議と決算承認を別の日にする「継続会」が可能との声明も出していました。それにもかかわらず、日程の見直しを行った企業は極少数に限られています。7月以降に延期した企業が20社、継続会の開催を行うのも24社に留まるとのことです。また、これだけ様々な催し事のオンライン化が進む中でも株主総会のオンライン開催もまだまだ限定的です。何でも海外を見習う必要はありませんが、株主総会の開催に関しては、海外企業の方が柔軟な対応を取っています。日本企業も形式やこれまでの慣習を重視するだけでなく、実質的にどのような株主総会があるべきかを今回を機に考え、その在り方を見直した方が良いと思います。