コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2020/5/25)

本日は、以下の4つについて取り上げます。

  1. 関西電力、報酬を個別開示 社長ら6人
  2. コロナ禍、本質探究の機会
  3. エクソン対ESGマネー コロナ後占う株主総会
  4. 企業の統治に多様な価値観

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1. 関西電力、報酬を個別開示 社長ら6人

【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力は取締役の報酬を金額にかかわらず、個別開示する方針を固めた。対象は年度末時点の在籍者で、2019年度は森本孝社長ら6人となる。役員らによる金品受領問題からの信頼回復に向け、経営の透明性を高める。

【コメント】
上場企業においては、報酬1億円以上の受給対象役員のみ個別開示が義務付けられていますが、関西電力は1億円未満の受給対象役員も含めて全役員を個別開示するそうです。あれだけのガバナンス不全を起こした以上、経営陣への戒めや情報の透明性を担保する意味でも、良い取り組みだと思います。
政策的には、以前から指摘されているように、報酬の個別情報開示の対象範囲を拡大する方向で今後検討すべきと思います。

2. コロナ禍、本質探究の機会

【注目ポイント(記事一部引用)】
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が東京など7都府県に出されたのが4月7日。その後、全国に拡大され、5月21日には関西2府1県が宣言解除となったが、この1カ月半の間に経営者を取り巻く環境は大きく変わったことは間違いない。

【コメント】
Withコロナ、Afterコロナというワードが飛び交っていますが、いずれにしてもコロナをきっかけに自社の経営の在り方を見直さない経営者はいないでしょう。
コーポレートガバナンスの分野に関していえば、アクティビストの活動もこの間活発な活動を維持していますし、ESG観点での企業経営を重視する投資家も増えており、引き続き経営の重要課題であり続けることは間違いないでしょう。
実際に弊社へのご相談や問い合わせも増えており、特に株主総会以降、各社の取り組みがまた一段と進みそうな印象を受けています。

3. エクソン対ESGマネー コロナ後占う株主総会

【注目ポイント(記事一部引用)】
5月27日に開催される米石油大手エクソンモービルの株主総会は、「コロナ後」の資本市場を展望するうえで重要な意味を持つ。
ここ数年のエクソンの株主総会は温暖化防止に関する情報開示や対策をめぐって、ESG(環境・社会・企業統治)重視の投資家が経営に圧力をかける場だった。今年は、英資産運用大手リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)が環境対策の不備などを理由に、ダレン・ウッズ氏のエクソン会長再任に反対票を投じることを事前に表明している。

【コメント】
コロナ後を見据えて、ESG投資熱の高まりを如実に感じます。5月19日に開催されたJPモルガン・チェースの年次株主総会では、気候変動対策を同社に求めるNPOの提案が最終的には否決されたものの約半数の株主の支持を集め、注目を集めました。
今後もこうした流れは強まるでしょう。ESG自体は日本企業も意識し始めていますが、EやSについて具体的な取り組みを求める株主からの要求は、それほど多くはありません。今後エクソンやJPモルガンに対する提案と同様の提案が、日本企業に対していつ行われるか、注目しています。

4. 企業の統治に多様な価値観

【注目ポイント(記事一部引用)】
ファンド出身の取締役の受け入れには専門家の間にも賛否両論がある。批判的な立場の専門家は、取締役を送り込んだファンドとその他の株主の間に情報格差が生まれるほか、社会的意義があっても直接利益に結びつきにくい方針が覆される例が米国などでは見られると指摘する。

【コメント】
記事で指摘されているように、取締役をファンドから受け入れることの良し悪しは確かに存在します。しかし、従来日本企業の取締役会はほぼ全て社内の人材だけで構成され、しかも出世の階段の最上位者で構成されていたためダイバーシティは、ほぼ皆無といえるほど極端な構成でした。
2015年のコーポレートガバナンスコード施行後、社外取締役の数が徐々に増え、明らかに取締役会の在り方自体が変化しつつあります。そうした中、多様な意見を取締役会に反映させるという観点で、ファンドからの取締役受け入れはある意味自然ですし、今後もその数は増えることはあっても減ることはないでしょう(もちろん、あくまで一般論で実際にはそのファンドや社外取締役次第ですが)。