議決権行使助言会社大手ISS、助言方針の改訂案への意見募集結果を公表

議決権行使助言会社大手のISS(Institutional Shareholder Services Inc.)が、世界の上場企業の株主総会議案に対する議決権行使の助言方針の改訂案に対する意見募集の結果を9月25日に公表しました。

ISS Announces Results of Global Benchmark Policy Survey

ISSの改訂案では、日本企業に対する課題として以下の3点を挙げていました。

・監査役会設置会社における社外取締役の比率が1/3以上でない場合、経営トップの取締役の再任議案に反対投票を推奨する

・政策保有株式の大規模保有を行う企業に対する、経営陣の取締役の再任議案に反対投票を推奨する

・取締役会の構成に関する事項

監査役会設置会社における社外取締役の比率

ISSの現在の助言方針では、監査役会設置会社で社外取締役を2名以上選任していない企業に対して、経営トップの取締役の再任議案に反対投票を推奨しています。
改訂案では、社外取締役の比率を1/3以上でない場合にすることへ変更しており、従来よりも高い基準を示しているといえます。なお、この際求めているのは、社外取締役であって、独立社外取締役ではないと推察される点、念のため言及しておきます。

意見募集の結果は、下記の通り86%の投資家が、本件の改定案に賛成の意思を示しています。

出所:ISS 2020-global-policy-survey-summary-of-results

政策保有株式の大規模保有を行う企業

今回の改訂案では、大規模な政策保有株式を保有する会社の経営陣の取締役の再任議案に反対投票を推奨することを提案しています。
意見募集の結果は下記の通り、改定案に対して69%の投資家が賛成を表明しています。

出所:ISS 2020-global-policy-survey-summary-of-results

また、政策保有株式の大量保有となる目安に対して、純資産または株主資本の 5%、10%、20%、それ以外のいずれにすべきかについても意見募集が行われました。
結果は、純資産または株主資本の10%を基準とするべきという意見が最多となっています。

出所:ISS 2020-global-policy-survey-summary-of-results

取締役会の構成に関する事項

改訂案では、取締役会の構成に関する以下の3点の事項に対して、関心の高さを高中低の3段階で示すことを求めていました。
・ 取締役会における性別の多様性の欠如(女性取締役の不在)
・ 取締役の過剰な兼任(多数の企業で同時に取締役を兼任)
・社外取締役の在任期間(在任期間の長期化が、独立性に疑義を生じさせるリスクが発生)

結果は、下記の通り、「取締役会における性別の多様性の欠如」、「取締役の過剰な兼任」、「社外取締役の在任期間」という順番で、関心の高さが示されています。

出所:ISS 2020-global-policy-survey-summary-of-results

今後の企業側の対応

以上がISSの助言方針の改訂案に対する意見募集の結果です。

今回の意見募集結果を受けて、ISSでは正式に助言方針の改訂を行う予定ですが、結果を踏まえると、多少の変更はあっても、基本的には改訂案の内容が反映されると予想されます。

特に1つ目の監査役会設置会社における社外取締役比率を1/3以上にするというのは企業にとっては高い基準を示されていることになります。これに対して、現在基準を満たしていない企業にとっては、社外取締役の役割が益々重要になってきている中、候補者探しは喫緊の課題となるはずです。

実際の助言方針の改訂およびその適用開始にはまだ猶予はありますが、いずれも相応の時間が掛かることを見越して、早めの準備が必要になってくるでしょう。