指名委員会等設置会社に移行すれば不祥事は防げるのか
昨日、関西電力が新たな経営体制に向けて社外取締役候補者を公表しました。同時に6月に予定している株主総会で、会社の機関設計を指名委員会等設置会社に移行することも併せて発表しています。
関西電力は28日、新たな経営体制に向けた社外取締役を発表した。企業トップや有識者ら8人を外部から招き、6月に指名委員会等設置会社へ移行する。
日本経済新聞 2020年4月28日
今回の経営刷新は、関西電力の複数の役員が、同社の原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題が昨年発覚したことが直接の原因です。加えて、これらの事実が社内調査で発覚した後も、監査役が取締役会への報告を怠るなど、ガバナンス不全が厳しく指摘されていました。
関西電力の役員ら20人による金品受領問題は、原子力発電所の立地する福井県高浜町の元助役らと関電側の不透明な資金の流れを浮き彫りにした。同社監査役が実態を把握しながら、取締役会への報告を怠っていたことも判明。30年以上にわたり続いたとされる電力会社と地元有力者の相互依存の背景には、ガバナンス(企業統治)のずさんさも透けて見える。
日本経済新聞 2019年10月5日
こうした背景があるため、社内事情やしがらみから脱却し、透明性とコンプラアンス&チェックを強化するのは当然のことです。そのため、機関設計として指名委員会等設置会社に移行することも「一見すると」正しい取り組みのようにみえます。
ところで、日本企業の中には、不祥事を起こした際に、指名委員会等設置会社に移行する例が少なからずあります。たとえば、みずほフィナンシャルグループや日産自動車などがそれに当てはまります。こうした過去に不祥事を起こした企業が指名委員会等設置会社に移行する理由としては「社外取締役が委員の過半数を占める指名・報酬・監査の各委員会の設置義務があり、従来よりも社外の目を取り入れ、コーポレートガバナンスが強化される」というような説明がなされます。
一般的に、指名委員会等設置会社に移行すると社外取締役が会社経営に影響力を持ちやすいというのは外形的にはその通りです。しかし、不祥事が防止できるかどうかはまた別の問題です。実際に、機関設計を指名委員会等設置会社にしていても、東芝やかんぽ生命のように、企業不祥事を防止できなかった例は少なくありません。
問題の本質は、形式上のガバナンス強化ではなく、実質的に何をどのように変えるかです。
この点について、報道されている内容や会社側の発表からは、まだ詳細が明らかになっておらず、関西電力が、本当に会社を変えていこうとしているのか疑念を持っています。穿った見方かもしれませんが、大阪市から推薦されていた橋下徹氏の社外取締役就任案を拒否したことも、うるさ型に関与されたくないという、どこか逃げの姿勢が透けて見える気もします。
今回の指名委員会等設置会社への移行を通して、形を変えること以上に、実質的に何を変えていくつもりなのかを、関西電力および新たに選任予定の社外取締役の方々には是非示してもらいたいと思います。