コーポレート・ガバナンスニュース(2020/9/27)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. 米国屈指の「物言う株主」が株主至上主義から転向した理由
  2. 社外取締役、数から質へ 経産省が実務指針

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1.米国屈指の「物言う株主」が株主至上主義から転向した理由

【注目ポイント(記事一部引用)】
コロナ禍からの経済復興に、環境や社会課題の解決を組み込み、より良い成長の機会を模索する動きが世界中で広がっている。
このような流れは経済・金融にとっても無縁ではない。こうした中、注目を集めているのが「金融の力で社会の持続可能性を向上させる」インパクト投資だ。株主至上主義の従来型の資本主義でも、古くからある慈善活動の延長線上でもない、新たな経済活動の実状に迫る。

【コメント】
「社会の持続可能性向上へのインパクト」を、リスク・リターンとは別に、投資判断の第3の軸に据えるインパクト投資について、取り上げられています。ESG投資熱の高まり、アクティビストの活発化、そして今回の記事のインパクト投資と機関投資家の形態は様々ですが、現在の社内の動向の変化を踏まえると、徐々に同じような方向性に向かうのではないかと考えます。もちろん、記事にあるように既存のアクティビストファンドのバリューアクトとその創業者が新たに創設したインパクト投資ファンドでは、その目指すところには違いはあります。しかし、経済的な成長には、SDGsの達成や事業活動と環境面・社会面におけるサステナビリティ(持続可能性)との両立が不可欠という点では、両社は同じ見解に立っているように見えます。まだまだESG投資もインパクト投資も市民権を得ているとは云い難い状況ですが、今回のコロナ禍によって改めて問われている、持続的な成長を実現するための企業活動の在り方に関心が集まる中で、今後数年で一気に両者への注目度は高まっていくと思われます。

 

2.社外取締役、数から質へ 経産省が実務指針

【注目ポイント(記事一部引用)】
企業統治(コーポレートガバナンス)の強化に向けて、社外取締役の本格的な役割発揮が期待されている。経済産業省は7月末に社外取の実務指針を公表。経営戦略や経営陣の人事報酬への適切な関与、投資家との対話などを通じ、社外の目による実効的な経営監督を促した。企業が社外取制度を導入する「数」の段階から「質」の確保へと軸足が移り始めている。

【コメント】
「社外取締役の在り方に関する実務指針」を経産省が公表してから1か月が経ちました。指針の詳細については以下の記事で解説していますので、是非ご一読を頂きたいのですが、この1か月、様々な立場の方と同指針について意見交換を行ったところ、「社外取締役の選任を改めて見直す必要がある」という声を多くお聞きしました。指針の中身をよくみると、「あるべき理想」としては、とてもよく理解できるものの、ここまで取り組むことができる社外取締役はどの程度存在するのか?と率直に疑問に思います。一人で4社以上の社外取締役を兼務している社外取締役方も数多く存在しますが、実際にこの指針通りに役割を果たそうとすると、1社につき毎週1~2日程度、繁忙期はそれ以上のコミットメントは必要です。そう考えると、せいぜい2~3社の兼務が限界ではないでしょうか。弁護士・会計士・大学教授といった社外取締役として選任されることが多い属性の方々についても、その方の能力・経験・取締役としての姿勢によって、適性が問われるでしょう。国は指針で社外取締役としてのあるべき理想像を示しましたが、実際に実行をする企業側では、改めて社外取締役としてどのような人材が相応しいのか、見直す必要性に直面しているといえます。

 

参考記事

<解説・前編>社外取締役の在り方に関する実務指針

<解説・後編>社外取締役の在り方に関する実務指針