コーポレート・ガバナンスニュース(2020/9/6)
本日は、以下の2つの記事について取り上げます。
- 株主との対話、DX活用を 経団連が行動方針
- 「社会目線」で議論 関西電力・榊原定征会長
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1.株主との対話、DX活用を 経団連が行動方針
【注目ポイント(記事一部引用)】
経団連は企業と投資家の対話を活発にするための行動方針を7日にもまとめる。新型コロナウイルスの感染拡大で企業と国内外の株主が直接会うことが難しくなったことを受け、対話のデジタルトランスフォーメーション(DX)を急ぐよう呼びかける。
【コメント】
コロナ禍において、DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが、日本社会・企業の課題であることが改めて浮き彫りになりましたが、株主総会の開催や株主との対話においても同じことがいえます。記事には、議決権行使を行うプラットフォームの使用割合について日本が欧米と比べて著しく低い水準に留まっている実態が指摘されていますが、こうした面だけでなく日頃の取締役会や指名・報酬委員会の開催も未だに対面に拘る企業が少なくありません。同じことを欧米ではできて、日本ではできないという合理的な理由がない以上、先入観やこれまでの慣習などが影響しているのだと思いますが、特に企業経営者の意識が根本的に変わっていくことが求められます。
2.「社会目線」で議論 関西電力・榊原定征会長
【注目ポイント(記事一部引用)】
関西電力の榊原定征会長(前経団連会長)は4日、毎日新聞のインタビューに応じた。役員による金品受領問題などの不祥事を受け、6月25日付で森本孝社長ら執行役を監督する立場に就いた榊原氏は、自身も含めた社外取締役のみが参加する会合を新たに開き、ガバナンス(企業統治)と成長戦略に関する考えを議論して執行役に示す意向を明らかにした。
【コメント】
関西電力の再建に関しては、榊原氏はこちらの記事で2年以内に風土改革を実現するとしています。しかし、指名委員会設置会社への移行後も、役員報酬の補填問題など、未だに過去の不祥事問題が新たに発覚するなど、まるで底なしのような状態です。関西電力は、社外取締役の役割を高め、コーポレートガバナンスを強化することを通じて再発を防止するということですが、批判を恐れずにいえば、ガバナンスを強化したとしても不祥事はなくなりません。下記の中村直人弁護士の記事が大変参考になりますが、社外取締役には現場の実情を見抜くだけの情報収集は困難であり、この限界を踏まえた上で、不祥事をどのように未然に防ぐかという観点で重要です。この点を見誤ると、形式上コーポレートガバナンスが強化されたものの、実質が伴わないという事態が続きます。参考記事にある通り、指名委員会等設置会社に移行したとしても同じことが繰り返されるだけという事態だけは避けたいものです。
参考記事
中村直人弁護士に聞く、スルガ銀行問題の根幹にあるもの ガバナンスを変えても不祥事はなくならない