コーポレート・ガバナンスニュース(2020/6/7)

本日は、以下の3つの記事について取り上げます。

  1. 企業の事業再編や独立促し成長戦略を後押し 経産省の指針概要が明らかに
  2. 【コロナ】日立も株主総会延期、すでに20社を突破|「延長」方式も広がる

  3. 5月総会、人事に厳しい目

※記事のタイトルをクリックすると、記事リンク先に移行します

1. 企業の事業再編や独立促し成長戦略を後押し 経産省の指針概要が明らかに

【注目ポイント(記事一部引用)】
経済産業省が7月中をめどに策定する、企業が事業再編を進める際の目安となる指針の概要が判明した。欧米に比べて遅れがちな事業再編やスピンオフ(分離・独立)を促し、新型コロナウイルス収束後に企業が成長戦略を描けるよう後押しする。売上高のような規模ではなく、資本効率などの財務データを重視し、経営資源の最適な配分を促す内容で、政府の新たな成長戦略に盛り込む。

【コメント】
今回の事業再編等の指針については、まだあまり報じられていませんが、次回のコーポレートガバナンスコードの改訂の目玉になる可能性があります。記事でも報じられているように、「グローバル展開する大企業向けに、経営目標や役員報酬の業績評価の指標として、投資した資本を使ってどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標を重視するよう促す」とあります。コーポレートガバナンスコードにも指針内容を盛り込むことを検討と書いてありますが、例えば、先のような一文を入れるだけで、CEOをはじめとした役員報酬のうち業績連動報酬のKPIの見直しは多くの企業で必要になりますし、まだまだわずかな割合に留まる株式報酬の導入もより一層進むでしょう。そして、業績連動報酬の改革が多くの企業で行われることで、役員報酬の水準も従来よりも上がるでしょう。役員にとっては、業績を上げたときのリターンは高くなりますが(ハイリターン)、一方で期待通りの成果を出せないときの解任リスクも同様に高まります(ハイリスク)。グローバル企業では当たり前のことではありますが、個々の役員の役割と責任に応じた役員報酬の設計と運用について、多くの企業で注目されると思います。

 

2.【コロナ】日立も株主総会延期、すでに20社を突破|「延長」方式も広がる

【注目ポイント(記事一部引用)】
「コロナ禍」の終息が見通せない中、定時株主総会を延期する上場企業が相次ぎ、すでに20社を超える。感染拡大の影響で決算確定や監査に遅れが生じていることなどから、決算期末から起算して3カ月以内に総会を開催するめどが立たないためだ。延期以外に、決算承認を後日行う「2段階方式」の採用を決めた企業も次第に広がっている。

【コメント】
新型コロナウィルスの影響で、6月の株主総会を従来通り開催できない企業が増えています。記事にあるように、決算の確定や監査の遅れなどが原因ですが、元をたどれば、6月末に開催している企業が集中していることも、今回のような不測の事態が生じたときに従来通りの開催を阻む要因ともいえます。本来はこれを機に株主総会の開催集中の解消に繋がることが期待されるのですが、今の流れではそうした動きを取る企業は少数に留まると思います。

 

3.5月総会、人事に厳しい目

【注目ポイント(記事一部引用)】
5月に開いた2月期決算企業の株主総会で、会社側の人事案などに反対する動きが目立った。株主は新型コロナウイルスの感染拡大下でも事業を継続するための減配には理解を示す一方、成長性や独立性の観点から取締役の選任などで昨年以上にクギを刺した。6月下旬に集中する3月期企業の株主総会でも、こうした動きが注目される。

【コメント】
取締役の選任について会社側提案をすんなり受け入れるというこれまでの常識が、徐々に崩れつつあります。それだけ取締役会や個々の取締役の重要性が高まっているとも言えます。取締役に求める要件をスキルマトリックスとして提示する企業が増えていることもその表れといえるでしょう。今後は、なぜその取締役の要件が必要だと考えるか、そもそも取締役会をどのような場にしていきたいと考えているかという取締役会や取締役に対する企業の基本思想が問われるケースも出てくると思います。